■■■ 2002/12/13 at 高田馬場AREA■■■ | |||||
季節は厳冬の候。いみじくも儚げな夢がひとつ。
夜の帳が舞い降り、「機械仕掛けの神」は暗闇の中で何かをつかもうと必至になって目を凝らしていた。
だが、求めていたものはなかなかつかめなかった。そしてある晩......... とある少女と出会った。少女は語る。
たやすくつかめるもので満足できるものならば、それはそれなりの価値しかないのと半獣半ZINの神に言った。
その瞬間、すべての現存する世界が消えた....................。手に掴んだとたんも砂に変わる金貨ならば、ZEUSにとって何の価値もない。
そう暗示しているかの如く......... 。芸術としての音楽? アートとしての音楽? ZEUS MACHINA、それは永遠の迷宮の中での幻想機械............... 耽美なる美の機械とは..............そしてその先で咲き乱れる奇怪な花とは................。 あわれなる哉イカルスよ、幾たびも山頂へかけのぼっては奈落の底へと落ちてゆく.........。ともあれ、その夜のこと。 退廃の一団は王女のヴェールや忍者の葉隠、人工の太陽蝋燭人魚、マンドラゴラの海女照らす大野神などにくるまりながら、 さらにはサーカスのテーマソングに乗り、目に見えない象と猿とライオンたちを引き連れ、再び、とある舞台に現れたという.................. 伝説とは永遠の神秘なり。さあ、未知なる世界の創造者たちよ、夜明けは近い。我らと共に進め...................................。そして |
|||||
|
|||||
●●機械仕掛けの神々の黄昏●● | |||||
外界には冷たい冬の空気が張りつめていた此の夜。
退廃の絵師たち---ロップスや、バイロスの描く女のごとき艶やかさで、薔薇色の衣裳を纏ったZINが現れた。
SEに合わせて鞭打たれたステージ上の空間は、一瞬にして、この世であってこの世でない、ZEUS MACHINAの一夜の劇場へとしつらえられていた。 『HEARTBREAKER』荘厳なオープニング。12/8に続いて披露された新曲である。 タム中心のドラム、ベースの印象的な音色---メロディの全体に流れる言いしれぬ憂鬱が耳に懐かしい。 '80年代positive punkを彷佛とさせる音に醸し出される、重厚なロマンティシズムに私達はひどく魅了される。 しかしそれは錆び付いた過去のものではなく、心震わす未知なるときめきに満ちている。 長い空白を経て私達の前に現れたZEUSの、新しい扉の鍵がそこにあった。 『LADY DAY』LOU REEDの名曲だが、華やいだ近未来風のアレンジを施されて独自の世界を作っている。 ZINのイベント「ワルプルギス」でも演奏された曲だ。ふと彼等がこの異端のロックアーティストのもつ甘い毒の、確かな継承者であると気付かされる。 『CHANGELING』伸びやかなヴォーカルが、私達を一気に、広く高い世界へと連れ去る。 オリエンタルなギターの音色がちりばめられた、ZEUSの代表曲のひとつと言えるだろう。極彩色の幻想が頭の中に拡がる。 『INNOCENT』これもワルプルギスの再演。これまでに無い異色の曲調だ。 遠い異国の空のもと、曲馬団の道化を思わせるようなメロディーとリズム。歌詞もはっきりと聴き取れ、胸に沁み入る。 古びたシャンソニエに居るような心地、繰り返される”innocent”---切ない詩情が、痛ましい程伝わってくる.........。 『WITCHCRAFT』ふわりと、ZINの羽根の上着が脱ぎ捨てられた。そして私達は爛れた『愛の嵐』のただなかへと、誘われてゆく。 欧羅巴の退廃がステージから零れ落ちてくるかの様な、陶酔を覚える...........。 『MACHINE MESSIAH』インダストリアルな曲調からメロディアスに変容する、この曲にはZEUSの相反する2つの魅力が共存している様に思える。 其処に居るのは肉感的な娼婦のサイボーグだろうか? 『HELLRAZOR』速い曲。一瞬の驚き---マダムエドワルダの『オペラ』の一節が歌われるのだから! そしてその次の瞬間、心地よく裏切られていく。過去を振りはらうでもなく、囚われるのでもない。 ZINの音と言葉の世界は、ルートヴィヒの城のごとく、豪奢で複雑な迷宮なのだ。クールで硬質な音が、サディスティックに心を捉える。 遊戯めいた謎を残しながら、ステージは終焉へと向かう。 『FENIXX』ラストも新曲。オリエンタリズム、サイバー、インダストリアル、ゴシック、そして。。。 これまでZEUSが聴かせてくれたあらゆる要素を昇華したような、何にも似ない、ZEUSの音であった。 彼等は飛翔する不死鳥に何を託しているのか。そして、何時しか彼等の幾つもの仮面に翻弄される事に無上の喜びを覚える私達の前に、 今度はいつ、その蟲惑的な姿を魅せてくれるのだろうか......... 。 (reported by KIKI) |